セイヨウミツバチの寄生虫であるヘギイタダニに対する治療効果に関するギ酸の温度と用量の影響
問題意識
ヘギイタダニが、接触毒のアピスタン(フルバリネート)に対し薬剤耐性を獲得しつつある中、蟻酸は有効な方法となりうるか。またどのような条件で使うべきか
参照論文
セイヨウミツバチの寄生虫であるヘギイタダニに対する治療効果に関するギ酸の温度と用量の影響
The effects of temperature and dose of formic acid on treatment efficacy against Varroa destructor (Acari: Varroidae), a parasite of Apis mellifera (Hymenoptera: Apidae).
https://eurekamag.com/pdf/004/004352441.pdf
ポイント
■ヘギイタダニ防除にギ酸を用いる理由
・ヘギイタダニが、接触毒のアピスタン(フルバリネート)に対し薬剤耐性を獲得しつつある
・ヘギイタダニは、ギ酸に対しては薬剤耐性はまだ獲得していない
・ギ酸は高価ではない
・通常、働き蜂にとって有害ではない
■ギ酸の問題点
・ギ酸は、有蓋蜂児・未有蓋蜂児にとって害になりうる
・現在の治療方法では、ヘギイタダニ防除効果に幅がある
・同じ治療を施しても結果にかなりの違いがある
■治療の効果に影響する要因
・ギ酸が揮発するところから巣脾までの距離
・ギ酸を置くところが、育蜂圏の上か下か
・巣箱内の蜂児の数量
・時期
・周囲の温度
■用量と時間の関係
・一般的に、用量が増加すると、害虫を殺すのに必要な時間は短くなる
■実験の条件
・左右後上は固い木材でできており、正面は目の細かいメッシュ(13平方cm)がついており、底は取り外し可能な金属(1.9平方cm)で引き出しがついており、上には直径3.5cmの穴がふたつ開けられている(餌やり用の穴。蒸留水と67%の砂糖水)内寸15.8 × 8.8 × 5.0 cmの箱
・箱に、未感染の300匹の働き蜂と30匹のヘギイタダを入れる
・5, 15, 25, 35 °C(24パターンでテストしたということ)の温度下で、0.00, 0.01, 0.02, 0.04, 0.08, 0.16 mg/L (0, 5, 10, 20, 40, 80 ppm)(リットルは気体の量。液体ではない)の用量のギ酸の燻蒸を、12日間行った。これらを3回繰り返した
■結果
○ダニの生存率
・ギ酸の燻蒸を開始して24時間以内では 1.54 ± 0.29のダニが死んだだけ
・5℃では、用量が0.16 mg/Lの場合のみでしか、ダニの生存率を下げることはできなかった
・用量が0.08 mg/Lと0.16 mg/Lの場合は、どの温度においてもダニを殺すのに効果があった
・25℃の場合は、どの用量でも、対照群(0.00 mg/Lのもの。つまりギ酸燻蒸していない群)よりもダニの生存率を下げることができた
○蜂の生存率
・どの温度下においても、働き蜂の生存率はギ酸治療によって影響を受けた
・ギ酸の効果は常にマイナスというわけではない
・蜂の生存率は、5℃で0.02 mg/L, 0.04 mg/Lの用量の場合、未治療の対照群よりも若干高かった
・5℃よりも高い温度の場合(15℃、25℃、35℃)、どの用量においても蜂の生存率は対照群よりも低かった
・15℃の場合、0.04 mg/L以上の用量で、蜂の生存率は対照群よりも低くなった
・25℃や35℃の場合、どの用量でも蜂の生存率は対照群よりも低かった
■検討
・5℃以上のすべての温度において、0.08 mg/Lと0.16 mg/Lの用量は、ダニの生存率を下げるのに効果があった
・ギ酸はダニを選択的に殺す治療法ではない
・最もよくダニを殺し蜂を殺さないのは、35℃で用量0.16 mg/Lの場合
・最も蜂を殺しダニを殺さないのは、25℃で用量0.02 mg/Lの場合(25℃では蜂が団子にならないからと考えられる)
・育蜂温度下で、短期間の高用量の治療は、ダニを最も効果的に殺すと同時に、蜂への影響を最小限に留める可能性がある
・5℃では蜂が早く死んだが、それはギ酸治療による影響ではなく、温度が維持できなかったためと思われる
・高用量の方が、低用量よりも、温度の影響を受けやすい
コメント
ダニも殺すが、蜂も殺すことになる。
35℃という最良の環境は真夏以外ありえない。
その他の情報
なし