地中海地域におけるヘギイタダニ防除のためのギ酸ベース治療
問題意識
ジェルパケットタイプと紙の短冊タイプの蟻酸治療の差異は如何ほどか、蜂蜜への残留はどの程度か
参照論文
地中海地域におけるヘギイタダニ防除のためのギ酸ベース治療
Formic Acid-Based Treatments for Control of Varroa destructor in a Mediterranean Area
https://www.researchgate.net/publication/7851032_Formic_Acid-Based_Treatments_for_Control_of_Varroa_destructor_in_a_Mediterranean_Area/download
ポイント
■ドイツでのギ酸治療の合法性
・有機生産物に関するヨーロッパのレギュレーションによれば、有機養蜂においてギ酸は天然物とされている
・蜂蜜や蜜蝋中の残留ギ酸についての公式の制限が存在しない
■ギ酸療法には、ジェルパケットタイプと紙の短冊タイプがある
○素材
・ジェル 200g(68%のギ酸と32%のカルボキシポリメチレン)
・短冊 85%の濃度のギ酸水溶液を染み込ませる
○ダニの致死率
・ジェル 93.6 ± 12.8%
・短冊 98.6 ± 1.8、100.0 ± 0.0%
○利用可能期間
・ジェル 2週間かけて徐々に発散する(1日5−9g蒸発)
・短冊 3日(1日26ー35g蒸発)
○育蜂への影響
・ジェル 中断
・短冊 育虫圏の拡大の仕方は、対照群のものと顕著な違いはなかった
○成蜂への影響
・短冊 最初の1週間においてかなり高いハチの致死率(通常の約5倍)が記録された
○女王死や盗蜂活動
・ジェル 観察されなかった
・短冊 観察されなかった
○蜂蜜へのギ酸の残留
・ジェル 3,855 ± 2,061 mg/kg、21日後は 1,261 ± 1,054mg/kg
・短冊 3,030 ± 1,624 mg/kg、21日後は 794 ± 518 mg/kg
※天然の蜂蜜の残留ギ酸濃度は、薄い蜂蜜は 10-15 mg/kg、濃い蜂蜜は 150-270 mg/kg
※流蜜期前にギ酸をダニ駆除剤として使用した場合の残留ギ酸濃度は、薄い蜂蜜は 300 mg/kg、濃い蜂蜜の場合は 600-800 mg/kg
■蜂児への影響
・ギ酸による長期治療は、蜂児や若齢蜂に害を与えることなく、コロニーの成長を抑制することもなかった
・春にギ酸治療を行うと、蜂児数の減少を引き起こしうる。また、未熟ないし若齢蜂の生理に影響を及ぼしうる
という相反する研究がある。
■検討
・1日のギ酸の用量は7-10gが良いという説
・1日のギ酸の用量は7gが良いという説
・第1週目の1日のギ酸の用量は13-21gが良く、第2週目の1日のギ酸の用量は10gが良いという説
・本論文は、1日のギ酸の用量は5-9gが良いという立場
・空気中のギ酸濃度が高い時、蜂児や成蜂の致死率が高く、未熟ないし若齢蜂の生理に悪影響を及ぼしうる
・気温が高いと、短冊タイプの1日のギ酸の用量は26-40gに達することがある。もちろん蜂に悪影響を及ぼす
・ジェルパケットタイプは、酸をゆっくり発散させ、成蜂の致死率も低くアドバンテージがある
・育蜂に与えるネガティブな影響も群れの生産に有害な影響を与えるわけではない
コメント
ギ酸を用いると相当量の蟻酸が蜂蜜に残留することになる
その他の情報
なし